iPhone 5sの登場にワクワクしないなんて言うのは、何も見えてないだけなんじゃないの? Tweet
って、超久々なエントリのうえに、タイトルはちょっと煽りっぽいんですが、あまりにも「iPhone 5sにはガッカリ」「ワクワクしない」「イノベーションがない」なんていう声がが散見されるので、個人的に感じた、iPhone 5sのアドバンテージについてまとめてみたいと思います。
いや、決して、iPhone 5sを買う自分を正当化するために、大したことない利点をすごいことに見せかけようってことではなくて、本当にすごいイノベーションだと思った点だけをまとめます。
iPhone 5cについても、関係あるところもありますが、以下は、基本的にiPhone 5sに関するハナシだと思ってください。なお、本稿は「Apple Special Event. September 10, 2013」の内容を元に書いています。
- 「Touch ID」がもたらすもの
- LTEの対応バンドが飛躍的に増えた
- 「M7コプロセッサ」で広がる? あらたな可能性
- これこそが本当に望まれていたフラッシュ ――「True Toneフラッシュ」
の4つの項目について、順次みてみたいと思います。
「Touch ID」がもたらすもの
「Touch ID」は指紋認証をホームボタンに組み込んだものです。指紋認証は、過去においても「フィーチャーフォン」に搭載されていた機種があったり、最近では富士通製の「ARROWS NX F-06E」にも搭載されています。従来の多くは、センサー部を指でなぞるなどの動作が必要であったの対して、iPhone 5sでは、ただホームボタンにタッチすればいいうえ、360度どの方向でタッチしても動作するというのは、同じように見えて、非常に大きなアドバンテージです。
いまや個人情報の塊で、仕事のデータなども抱えるスマートフォンを、パスコードやパターンなどでのロックをせずに使うなどということは考えられません。しかし、たとえば出先で地図を見ながら移動するときなど、頻繁にパスコードを入力するということになりがちで、実は非常にストレスです。その点、指紋認証はスマートで、「ARROWS NX F-06Eの指紋認証センサーが超絶便利な件」などを読んでも、そのメリットの大きさが実感できると思います。
さらに、iPhone 5sでは、単にロックを解除するだけではなく、デモでもあったように、App StoreやiTunesでのアプリや音楽の購入の際に、Apple IDのパスワードを入力せずに、指紋認証で購入が済んでしまうということが実現できます。
詳細は発表されていませんが、指紋の情報はA7チップの特別な場所に格納され、Touch IDの仕組みからしかアクセスできず、Appleのサーバなどにも一切保存されないというのは非常に大きな意味があります。パスワードと違い、指紋は変更できないので、その情報がコピーできないというのは絶対的に必要なことです。おそらくOSレベルでもデータにはアクセスできないものと思われます。
そのうえで、App Storeのアプリが、指紋での認証を使えているということは、おそらく、アプリ側から「認証ができたかどうか?」という情報に関してはアクセスできるAPIが提供されるものと思われます。それが可能であれば、オンラインショッピングやネットバンキング、パスワード管理ソフトなどの認証に、Touch IDが利用できることになるわけです。これは大きな意味があるのではないでしょうか?
LTEの対応バンドが飛躍的に増えた(これは、5cも)
iPhone 5もLTEには対応していましたが、使える「バンド(周波数帯)」が限られていて、携帯電話キャリアが提供するすべてのバンドが使えず、他の端末では圏内であっても、iPhone 5では使えないというケースがありました。
これは、iPhoneがワールドワイドで少ない種類の端末だけで展開していることと、LTEのバンドは非常に多く、国やキャリアで異なることに起因します。これは、WikipediaのLTEの項目にある「周波数帯」を見ると実感できることでしょう。
携帯電話は無線機であるわけですが、対応させる周波数帯を増やして、かつコンパクトに維持するのは簡単なことではありません。iPhone 5sおよびiPhone 5cですが、サポートされたLTEバンドが増えたことで、キャリアには依存しますが、国内ではauにおいてかなり貧弱だったiPhone 5のLTEの節三性が大幅に改善されることが期待されます。また、それによって、NTTドコモでの展開も可能になっているほか、海外ローミングの際にもLTEの接続性を高く維持できることが期待できます。
一見地味なところですが、きちんと繋がるという携帯電話の基本機能がしっかりしたことは大きな意味があります。国内キャリアの状況については、こちらの記事「au版/ドコモ版iPhoneは800MHz対応に対応 SB版は......」が参考になります(2013年9月11日11:14追記)。
「M7コプロセッサ」で広がる? あらたな可能性
いままでも、たとえば加速度センサーなどを使った、フィットネスのアプリや目覚ましアプリなどはありましたが、どうしても常時動作するために、バッテリの持ちに影響がありました。また、たとえば電車で移動中にもかかわらず、新しいWi-Fiスポットを発見すると、それにつなぐかというのを訊かれるのは何気にストレスだったりと、端末の移動状態によって動作を変えられないことのストレスもありました(結局、Wi-Fiの「接続を確認」を「オフ」にしている人も多いでしょう)。
まぁ、詳細は実際に使ってみないとわかりませんが、Appleの主張によれば、M7コプロセッサは、メインのプロセッサであるA7チップより省電力で加速度センサー、ジャイロ、コンパスのデータを処理できるうえ、A7チップを動作させずに、常時それらのデータを処理できるため、端末の動きに応じてネットワーク接続など振る舞いを変えることができ、バッテリ消費を抑えられるとのことです。
iPhone 5cなどには搭載されていないので、iPhone 5sのみとなりますが、M7コプロセッサがあるからこそ、実用的になる新しいアプリの可能性もあると思われます。
これこそが本当に望まれていたフラッシュ ――「True Toneフラッシュ」
よしなに脳内で補正している人間の目と違って、カメラの場合、光源の「色温度」によって、色味が大きく変わってしまいます。銀塩カメラのころは、プリントする際にそれらは調整されていましたし、デジタルカメラの場合、ホワイトバランスの調整(たいていはオートですが)で、それらは補正されています。
これは、光源の1つしかないか、複数あっても色温度が同じであれば問題ないのですが、白熱灯やバースデーケーキのキャンドルがほんのり光る状況下で、フラッシュ(ストロボ)をたくような状況では問題で、画面の場所によって、色がおかしくなったり、全体的にイメージしていたのと違う色になったりということになってしまいます。
これは、白熱灯やキャンドルの色温度と、フラッシュの色温度が大きく異なることに起因します。フラッシュの色温度と周囲の光源の色温度が一致させられれば問題はないのですが、これまでのフラッシュは常に同じ色温度でしか発光できないので、プロの現場などでは、フラッシュの前にフィルターを付けるなどして解決してきました。
iPhone 5sに搭載された「True Toneフラッシュ」では、周囲の光源の色温度に応じて、発光する光の色温度を変え(実際には別々の色温度で発光する2つLEDの輝度を調整して色温度を変える)、環境光の色温度とフラッシュの色温度を一致させ、自然な写真を撮れるようにするというものです。Appleの発表によれば、これは「世界初」とのこと。
とりあえず使ってみないとわからないこともあるけど
現時点では、AppleのWebサイトと発表内容のみからの判断でしかありませんが、地味ながらも、実際の利用シーンでこれまで困っていたところ、不便だったところを、ナニゲに凄い技術革新やアイデアで実現してきたところは大きいと思います。たしかに、「iPhoneがなかった時代」に「iPhoneを発表した」というほどのインパクトはありませんが、ただ機能を増やすのではなく、着実に「ユーザー体験」と「実用度」を上げてきているのは、すばらしいことだと思います。