ビジュアルボイスメールが使えないau版は、iPhoneの価値を損なっている このエントリーを含むはてなブックマーク Clip to Evernote

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iPhoneが日本に導入されて以来、インフラが貧弱なソフトバンクモバイルでしか使えなかった状況がようやく変わり、au/KDDIからも発売されることには、大きな期待が寄せられてきました。

しかし、いざ蓋を開けてみると、au版iPhone 4Sでは、「〜@ezweb.ne.jp」のメールがMMSではなく、PCなどと同じメール(IMAPによる受信)であるなど足りないところは多く、『iPhoneの世界観』を満たせないままに不完全な状態で発売されているという、よろしくない状況です。

「電話の再発明」こそが「iPhone」の原点

いまは亡きスティーブ・ジョブズが率いていたアップルが2007年1月、世界を変えるべく『電話を再発明(reinvent the phone)』した製品として発表した「iPhone」を特徴とする機能はたくさんありますが、その1つに「ビジュアルボイス(Visual Voicemail)」があります。

それまでの携帯電話の留守番電話機能は、センター側にメッセージが録音されていて、それを聞くためにはセンターに電話を掛け、音声ガイダンスにそって操作する必要がありました。端末によっては、ある程度端末側のメニューで操作できるようになっているものの、どんな留守電が入っているかは一通り聞かないとわからないなど、非常に面倒なものでした。

これは、携帯電話が通話の機能しか持たない時代であれば、当たり前の設計だったといえますが、現在の端末のリッチなユーザーインターフェイスとは明らかにミスマッチです。それに対し、iPhoneの登場とともに登場した「ビジュアルボイスメール」は、まさに「留守番電話サービス(ボイスメール)」を再発明したものといえます。

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左が「留守番電話プラス」サービスを契約したソフトバンク回線のiPhoneのビジュアルボイスメール。一覧から再生したいメッセージを選択できる。右はau版iPhone 4Sで「電話アプリ」で「留守番電話」を選択した画面。留守番電話センターに電話を掛けて確認するかたちになる

スクリーンショットを見れば一目瞭然、録音されたメッセージが、発信者の名前と時間、未再生かどうかが一覧され、必要そうなメッセージから再生することができます。たったそれだけ、というシンプルなユーザーインターフェイスですが、驚くべきことに、iPhoneより前にはそのようなものは存在していませんでした。

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しかも、メッセージは音声ファイルの形で、端末側に送られてきているので、圏外の場所に移動してしまっても、メッセージを確認できますし、iOS 5から提供された「Notification Center」にも誰からの留守番電話かがわかる形で表示されるので非常に便利です

この機能の実現にはキャリア側が提供する留守番電話サービス側の対応が必須なわけですが、 日本にiPhone 3Gが導入された当初から、ソフトバンクでは「留守番電話プラス」としてビジュアルボイスメールのサービスが提供されていました。

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グループ通話を使うと、複数人で会議通話ができる。iPhoneのスピーカーフォンの機能やBluetooth接続の会議用スピーカーと併用すれば簡単な電話会議もできてしまう。ただし、現時点ではauは未対応

そのほか、通話中に着信があった場合に、会話を保留して、着信を受ける「割込通話」、複数の相手と電話会議ができる「グループ通話」など、iPhoneならではの電話機能があり、それらをセットした「iPhone基本パック」をソフトバンクは提供しています。

ソフトバンクモバイルが、「iPhone基本パック」とネーミングしたとおり、いずれもiPhoneを「iPhoneらしく」使うためには必須のサービスと言えるでしょう。

残念なau

しかし、auでは現時点では「ビジュアルボイスメール」、「グループ通話」ともに非対応という残念な状況です。グループ通話は画面上のボタンは有効で、中途半端に反応するものの、実際には利用できません。

au版の制約である、データ通話と通話を同時にできない点は、CDMA2000の制約ゆえ、コストや端末サイズなどからiPhone 4S自体が対応していないため、しかたがないわけですが(音声通話とデータ通信の同時使用に対応したauのE31Tもある)、キャリア側の取組みで対応できる、これらの音声サービスやMMSに対応しないで、見切り発車的にiPhoneを発売してしまったのは、細部までこだわって製品をデザインした人々に対しての裏切り行為ともいえなくありません。

もちろん、対するソフトバンクモバイルも、肝心のインフラがガタガタだという深刻な問題を抱えています。回線契約を管理するシステムの問題など、改善すべきところは山積みのようです。iPhoneの提供する価値に理解が深い孫正義氏の想いだけが空回りするのではなく、足回りを固めて、iPhoneのユーザー体験のあるべき姿を実現できるキャリアを目指してほしいところです。

一方のau/KDDIは、インフラはしっかりしていても、iPhoneのような製品のどこに価値があるのかを、はたして理解できているのでしょうか? iPhoneが提供しているのは、デバイスの価値ではなく、ネットワーク側のサービスも含めた総合的なユーザー体験です。

そもそも、自分たちが築いてきた、EZwebのメールすら満足に提供できていないのにも関わらず、現状や今後の計画についての明快な説明がなく、小さな文字での注意書きで逃げるようなやりかたは、いかがなものでしょうか? 非公式にKDDIの方に確認したところでは、MMSサポートは2012年1月の予定で、他のサービスへの対応も順次予定しているそうですが、そうした大切なことはきちんとアナウンスしてほしいものです。そうしたPRやauショップの現場への情報提供や教育も含め、今後の改善に強く期待したいところです。

2011年12月15日に公開された「絵文字・Eメール着信通知機能のiPhone 4Sへの対応予定のお知らせ」によると、MMSやビジュアルボイスメールへの対応は、2012年3月までに行われるということです。ここにきてようやく公式な発表というのも遅すぎますが、いざ発表されたものの、当初一部報道にあった2012年1月ではなく3月というのも残念な限りです。とはいえ、au版iPhoneに不足している機能のサポートに関してはじめて公式に発表があったということは評価されてしかるべきでしょう。まぁ、よくもわるくも日本の大企業という感じで、ソフトバンクモバイルとはかなり対照的ですね。(2011年12月16日 12:33追記)


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