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安全運転でたのしい自転車生活を

首都圏の計画停電が2011年3月14日(月)にはじまって、特に初日に電車の運転本数が少なくなったせいか、都心では自転車で移動されている方をたくさん見るようになりました。

先日も夕方、青梅街道を荻窪方面から新宿に向かって走っていたところ、非常に危険な運転をしている自転車とたくさん遭遇しました。おそらく、ご本人は『危険』という意識はないのだと思うのですが、これをきっかけに、ぜひ『自転車の正しい交通』を意識して、安全で愉しい自転車通勤にしてほしいと思います。もし、これを読んでいる方の周囲に、会社に自転車で来ているという同僚がいらっしゃったら、ぜひ教えてあげてください

右のPDFファイルは、自由に印刷、配布していただいてかまいませんので、ご活用ください。

以降では、いくつか代表的なルール違反=道路交通法違犯について取り上げますが、法律違犯かどうかが重要なのではなく、あくまで、自分自身や周囲の安全のために重要なルールだということを忘れないでください。法的な面を含んだ解説については、警視庁の「自転車の交通安全」のページも、併せてご覧ください。

自転車は『車道を左側通行』

都心を自転車で走っていて、一番危険を感じるのが、車道の右側を『逆走』してくる自転車です。特に、都心の道路は路上駐車も多く、駐車している自動車の影から突然出てくる自転車にはドキっとします。おそらく、逆走している方も同じように感じていると思いますが、これは非常に危険なことです。

道路においては、自転車を含む『車両』は左側通行がルールになっています。つまり、自動車を運転しているドライバーやオートバイのライダー、ルールを守っている自転車乗りからみても、道路の右側に寄って正面から走ってくる自転車の存在は恐怖以外のなにものでもありません。

狭い道路で車両同士がすれ違う場面を考えてみましょう。『左側通行』というルールがなければ、お互いどちらに避けていいかわからず、混乱が生じてしまいます。自動車、バイク、自転車は、お互いどちらに「避ければいいのか」という合意が取れているからこそ、安全にすれ違うことができるのです。

一方、広い道路で、中央分離帯がある道路では、正面から別の車両が走ってくることがないことがわかっているので、安全に走れるわけですが、そこで逆走するのはもってのほかです。

また、お互い30km/hで走っている場合、正面衝突すると相対速度は60km/hとなり、衝突時のエネルギーも大きくなり非常に危険です。とにかく、自転車は車道を左側通行。それも、車道の左端に寄って走らなくてはいけません。たまに、自動車と同じように、道路の中央によって右折する自転車を見かけますが、自転車は道路に端によって、走行する必要があるので、一旦、正面に渡ってから、右方向に渡る必要があります。原付の「二段階右折」と同じ方式です。

なお、道路の端に2本線の表示で区切られた車線がある場合、そこは「歩行者専用路側帯」なので、自転車は走ることはできないので、その車道側に沿って走ることになります。

実際には、警察官も見ても取り締まることはほとんどないのが現状ですが、道路交通法上、これに違犯すると3カ月以下の懲役、もしくは5万円以下の罰金が課せられる可能性があります。それほど重要ということです。自分や周囲の安全のためにも、絶対に守るべきルールです。

ちなみに、道路交通法上、自転車は車両のひとつである「軽車両」に分類されていますが、じつは人が乗っている『馬』などの動物も軽車両のひとつです。つまり、馬に乗って道路を走る場合も、道路の左側を走る必要があります。

歩道の走行は例外的。歩行者優先です

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日本では、警察官も含めて、自転車が歩道を走ることは、事実上当たり前のことになっています。しかし、5km/h以下で歩いている歩行者と、20km/hくらいは軽く出る自転車が同じ歩道を入り乱れて走るのは非常に危険です。実際に、事故も多発しているようです。

自転車は、道路交通法上も車道の左側に寄って走るのが原則で、歩道の走行は例外的に認められています。歩道を走っていいのは、「自転車通行可」の標識がある歩道か、周辺の状況からやむを得ない場合に限られています(その他、13歳未満の子どもと70歳以上の方は常に歩道を通行できます)。

歩道を走れる場所においても、車道寄りを『徐行』しないといけません。徐行というのは、危険があった場合などにもすぐに停止できる速度です。徐行の定義として明確な速度は明示されていませんが、10km/h以下とされる場合が多いようです。

また、歩行者が優先で、歩行者のじゃまになるような場合、一時停止することが法律でも定められています。つまり、歩行者をどかせるためにベルを鳴らしたり、間をすり抜けていくような運転は問題外です。

心構えとしては、歩行者が近くにいる場合、歩くのと同じ程度の速度で走るようにするのがよいだろうと思います。都心には、自転車の車道通行が危険なエリアや、自転車通行が禁止されているトンネルなども多く、歩道を走らなくてはいけないケースもあります。そうした場合には、歩行者のための『歩道』を走らせてもらっているという意識で走るべきでしょう。

また、都内の商店街などでは、自転車の走行を禁止している場所も数多くあります。そうした場所では、自転車から降りて押すべきです。

実際には、これらのルールを守らず、歩行者の間を縫うように歩道を爆走する警官も多数見かけるのには、ほんとうに困ったものです。

無灯火は危険! ライトは前が『白』、後ろが『赤』。

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夕方から夜間は、ライトを付けていない自転車は周囲から非常に見えにくいのが現実です。山奥での夜間に乗るのと違い、都心においては、周囲に自分の存在を知らせるのが、ライトを点灯する大きな目的です。

特に、現在は節電のために多くの商業施設などが看板などを消灯したりしている関係で、都心部でも非常に暗くなっていて、自転車の存在が見えにくくなっていますので、ライトの重要性はより高いといっていいでしょう。

また、赤いライトを前面に向けてハンドルなどに付けている人がいますが、これも非常に危険です。自動車やオートバイなどもそうですが、前面(前照灯)が『白』で、後面(尾灯)が『赤』であることによって、周囲の車両や歩行者から、車両の進行方向を知ることができるのです。ですから、これを逆にするのは非常に危険な行為です。

なお、道路交通法上は、尾灯の代わりに反射板(当然赤い色に光るものです)でもいいことになっています。とはいえ、自ら発光するライトのほうが、視認性は高いので、自らの存在を他の自転車や自動車などに知らせるためにも、ぜひ後ろ側もライトにするのがオススメです。

自転車店によっては、反射板もない状態でお客さんに自転車を引き渡すこともあるようですが、反射板もライトも無い状態ですと、夜間はその存在に非常に気づきにくくなります。

携帯電話を操作しながらの走行は厳禁。ヘッドフォンも避けよう

携帯電話を操作したり、通話しながらの運転は、自転車の場合も法律で禁止されています。歩行中でも携帯でメールしながら歩くのは周囲への注意が十分できなくなり危険なのですから、より速い速度で走る自転車ではより危険です。

また、iPodなどで音楽を聴きながら走っている人もたまに見かけますが、走行中は『音』も周囲の状況を把握するのに、重要な情報源となります。

これについては、2chの自転車板やmixiの自転車コミュなどでもよく荒れる話題ですが、安全性を重視するなら、ヘッドフォンなどで音楽を聴きながら走行するのは避けるべきでしょう。脇道から突然飛び出してくる自動車や自転車、子どもなどの存在も、音という情報があれば、よりはやく気づくことができます。自分や周囲の命を守るためにも、避けたいものです。

だろう運転』ではなく、『かもしれない運転』を心がける

運転免許を持っている方なら、教習所などでよく言われたことだと思いますが、事故は周囲の車やバイク、歩行者や自転車同士でも起こります。

お互い人間ですので、注意力散漫な時もあるでしょうし、そもそも遵法運転など眼中ない人もいます。

ですから、たとえば、「路上駐車しているあの車が突然走り出すことはないだろう」などの「○○だろう」といった希望的な状況判断で走るのではなく、「あの車は突然走り出すかもしれない」、「歩道にいるあの自転車が突然車道に出てくるかもしれない」など、周囲の状況を観察し、「○○かもしれない」と考えて走ることは非常に大事です。

筆者の過去の経験でも、幹線道路を走っているときに、突然脇道から一時停止しないで乗用車が出てきたり、歩道を同じ方向を向かって走っていた自転車が車道の状況を確認せず、こちらの目の前で車道に出てきたこと、停車中のタクシーが方向指示器も出さず、目視もしないでいきなり発進してきたり、客を降ろすために、突然ブレーキをかけたりという場面にも幾度となく経験しました。

そんなシチュエーションで、"大丈夫だろう"と思って走っていては、間違いなく事故に遭遇することになります。自動車の動きは、ある程度運転の経験がないとわからない部分もあるかもしれませんが、相手の気持ちを想像して、どうしたいのかよくわからない場合は近づかないということも大事です。

そのためには、時間に余裕を持って行動すること、また、周囲の状況をよく見ること。直接見るのが基本ですが、バックミラーなどを装備することも役に立ちます。また、ドライバーの顔を見て、お互い認識しあうことなどが大事だと思います。

松尾 公也さんのエントリ「ぼくが自転車通勤で気をつけていること」なども参考になります。事故を起こさず、周囲にも迷惑をかけないように、たのしい自転車生活にしてくださいい。

自転車の整備も大事

ママチャリとかは比較的メインテナンスフリーで走れる感じではありますが、最近乗っている人も多いクロスバイクなどは、メインテナンスは重要です。メインテナンスといっても何から手を付けていいかわからないと思いますが、そんな人は、自転車を買ったお店などに相談してメインテナンスしてもらったほうがいいと思います。

また、できれば、自分でタイヤの空気を入れることくらいはできるといいでしょう。自転車のタイヤは、何もしていなくても、少しずつ空気が逃げて、空気圧が低くなってきます。空気圧が低くなると、走りが重たくなり、パンクしやすくなります。

特にロードバイクなどの、比較的細く高い空気圧を入れているタイヤですと、すぐに適正な空気圧より下がってしまいます(タイヤによりますが、1週間くらいで、かなり圧力は下がります)。

自転車のタイヤの空気を入れる部分(バルブ)は、主に3種類あり、対応した空気入れも異なりますので、わからない方は、自転車屋さんに相談するといいでしょう。

メインテナンスの上でも最も重要なのはブレーキです。マウンテンバイクやクロスバイク、ロードバイクなどのブレーキは、制動力が高い反面、雨天時などに走行すると、比較的早くブレーキシューが摩耗してきます。また、ブレーキワイヤーものびたり、切れたりすることもありますから、定期的な点検は必須です。

普段乗る前には、ブレーキが効くか、タイヤの空気がきちんと入っているか、また、車輪と自転車のフレームを止めている部分やシートポストなどの固定部分が、クイックレリーズという簡単に取り外しできるようになっている場合は、ちゃんと固定されているか確認したいものです。悪質ないたずらとして、Vブレーキの『バナナ』の部分を外してしまうものも見受けられます。かならず、乗る前にチェックしましょう。

駐輪場所もきちんと確保しよう

多くの自治体の仕事のなかには『自転車対策』というようなものが多いのが現実です。これは、道路などに放置、駐車されている大量の自転車の問題です。

都内でも、たとえば渋谷区などは機械式の駐輪場を多く整備していて、自転車で通勤したり遠方に買い物に行ったりするという使い方にも対応しています。一方、新宿区などは年間契約の駐輪場がほとんどで、非常に使いにくいのが現実ですが、きちんとした駐輪場所を探して置くようにしたいものです。

最近では、六本木ヒルズや東京ミッドタウン、高島屋タイムズスクエア、南青山のAoなど、かなりの台数が駐輪できる駐輪場を整備している商業施設も増えています。商業施設とオフィスビルを併設しているようなところでも、オフィス利用者の駐輪は認めていないところも多いようで、通勤となるとなかなか駐輪場所の確保は難しいのが現実です。

会社によっては、自転車での通勤を明示的に禁止しているところもあるでしょうから、難しい面もあるかもしれませんが、できれば、こうした機会に、会社を動かして、入居ビル側に駐輪場所を確保してもらうなどの取り組みができればいいかもしれません。実際、震災をきっかけに、自転車通勤を推奨しているという話もききます。小さな会社なら、オフィス内に置くスペースを確保してくれるところもあるかもしれません。

最近では、ファンライドステーションなど、主に本格的にロードバイクに乗って通勤する人々向けの施設もできていますが、まだまだ少ないのが現実です。

大事なのは、社会的に「自転車が悪」と見られないように、交通ルールも守り、駐輪も適切に行うことだと思います。

本格的に自転車通勤するなら

筆者の周辺でも、ママチャリで片道10kmほどの距離を出勤したというような話をちらほら聞きます。筆者も、20年くらい前は、いわゆるママチャリ的な自転車(無印の軽快車)で通勤していたこともありました。その後、クロスバイクやロードバイクに乗るようになり、ママチャリとはまったく違う走りに、なんでもっと早くママチャリ卒業しなかったのか? と後悔しました。もし、今回、はじめて自転車で通勤して、その愉しさに目覚めたなら、クロスバイクやロードバイクの世界に一歩踏み出してみてもいいかもしれません。

すでにマウンテンバイクやクロスバイク、ロードバイクに乗っているなら、タイヤを履き替えてみるだけで、走りが変わったりするので、そういうところから挑戦してみてもいいかもしれません。特に、なんちゃってマウンテンバイク的な自転車の場合、オフロード走行ができない設計なのに、山向けのタイヤが装着されていたりするので、街乗り向けのタイヤにするだけで、相当変わるはずです。

また、ヘルメットをすることもぜひ検討してみてほしいと思います。もちろん、ロードバイク乗りで有名な某自転車店主のように、ヘルメットは不用と言い切る人もいます。その方は、おそらくヘルメットが必要になるような走りをしていないし、常にそのように意識を張って、適切な判断を積み重ねていかないといけないと考えておられるのだろうと思いますし、それも正論です。

しかし、人間である以上、ミスもありますし、実際にヘルメットをしていたことで助かった事例もあります。ヘルメットはあなた自身の命や身体を守るだけではなく、事故にあった場合の相手方の生活を守ることにも繋がるからです。


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