iPhoneの回線は、au、SoftBankか? はたまたドコモがいい? Tweet
2008年7月11日のiPhone 3Gの登場とともに、日本にiPhoneを導入したソフトバンク最大の弱点は、2011年10月7日にiPhone 4Sの価格発表が行われた記者会見の際にソフトバンクモバイルの宮川CTOが認めたように通信インフラです。
地方で入らない状況はひどく、観光地や人々が住んでいるような地域でさえ、電波が入ることは期待できません。都心部でも、ビルの一階の店舗などに入ると、圏外であることは非常に多い状況です。
いくら「電波改善宣言」とはいっても、これまでのインフラ整備の遅れは一朝一夕には巻き返せないというのが実情でしょう。実際、基地局の建設には多額の資金が必要ですし、工事だって1日で済むような話ではありません。日経トレンディネットの2008年の記事「基地局4万6000局達成の裏に苦労あり! 孫社長を支えるソフトバンクモバイル宮川潤一CTO」でも、「なんちゃって基地局」を作ったと明言しているくらいで、はたして他のキャリアに並ぶ日がくるのかという気がしてしまいます。いくら基地局を数だけ増やしても、適切なセル設計などがなければ、求めるカバーエリアは満たせないわけで、その辺のノウハウや経験も重要でしょう。
そんな状況ですので、au版にiPhone 4Sには大いに期待していましたが、MMSに未対応でスタートし、現状でキャリアメールのプッシュ配信に対応していないau版iPhone 4Sでは、即MNPで乗り換えるには辛く、筆者自身は当面ソフトバンクメインで行くことにしました。
とはいえ、auでのMMS対応状況は10月12日まで明らかにされず、auかソフトバンクと迷っているうちに、ソフトバンク版の入手が難しくなってしまいました。
そんななか、ヨドバシカメラの店頭で在庫ありの表示を見かけて、au版iPhone 4Sをついつい新規で加入。一方のソフトバンクのために、SIMロックフリー版のiPhone 4SをeXpansysから購入してしまいました。ということで、auとソフトバンクに加え、ドコモ回線を利用したMVNOである日本通信(b-mobile)の状況についての雑感をかんたんにまとめてみました。
条件がよいときの回線速度はどうなのか?
接続の安定度については、なかなか客観的なデータを示すのが難しいので、安定した状況での通信速度をテストしてみました。今回は、以下の組み合わせで、Xtreme Labs Speedtestを使い、それぞれ5回計測した結果の平均を取りました。
- au版iPhone 4S
- SIMロックフリー版iPhone 4S+日本通信b-mobile Fair(ドコモ回線を利用したMVNO)
- SIMロックフリー版iPhone 4S+ソフトバンク
実際の測定値はグラフのとおりで、W-CDMAのソフトバンクとドコモ回線を利用するb-mobileが拮抗し、CDMA2000 1xのauは単純比較では遅くなります。しかし、ソフトバンクは都内であっても、接続できなかったり、大きく速度を落とす場面もあるのに対して、auは比較的安定した印象です。
SIMロックフリーでないiPhoneで使えるキャリアとしては、回線の安定度という点でいえば、auのほうが上ではないでしょうか? たとえば、筆者がたまに行くカレー屋2店、代々木の「野菜を食べるカレー camp」、渋谷の宮益坂上にある「もうやんカレー246」のいずれも店内奥のほうでは、ソフトバンクは圏外もしくはまったく通信できない状況ですが、auは問題なく通信できます。
携帯電話として基本である「繋がる」という点で、総じてソフトバンクよりauのほうが状況はよさそうですが、auはビジュアルボイスメールやMMSの対応など、まだまだ不完全な部分もあり、選択は容易ではありません。auは2012年1月よりキャリアメールのMMSの対応をするという話があるので、それが実現すれば、auは強力な選択肢になるでしょう。
おそらく、回線の繋がりやすさだけで見れば、SIMロックフリーのiPhoneにドコモ(もしくは、b-mobileの音声付きサービス)のSIMを入れて使うのがベストなんだろうとは思いますが、端末の入手性はもとより、キャリアメールが実質的に使えないのに近い状況なので、キャリアメールでのやりとりがある人には、それ1台で済ませるのは無理と言えるでしょう。
SIMロックフリー版で使われることを想定しているb-mobileと違って、ドコモがiPhoneに向けたサービスを積極的に提供してくれるとは期待できないので、現状で回線の繋がりやすさとサービスのバランスを考えると決定打はありません。
SoftBank | au | ドコモ | b-mobile | |
---|---|---|---|---|
対応端末 | SoftBank版iPhone、もしくはSIMロックフリー版iPhone | au版iPhone 4Sのみ | SIMロックフリー版iPhoneのみ | |
方式 | W-CDMA | CDMA2000 1x EV-DO Rev.A | W-CDMA (ドコモFOMA回線) | |
電話機能 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ (音声付きサービスでのみ利用可) |
通話しながらのデータ通信 | ◯ | × | ◯ | ◯ |
ビジュアルボイスメール (留守番電話機能) | ◯ (留守番電話プラス契約時に利用可) | × (2012年3月までに対応予定) | × | × |
従来の留守番電話 | ◯ (留守番電話プラス非契約時に利用可) | ◯ | ◯ | ◯ |
グループ通話 | ◯ (要オプション契約) | × | × | × |
SMS | ◯ | △ (国際SMS非対応、国際SMSには2012年3月までに対応予定) | ◯ | ◯ (音声付きサービスでのみ利用可) |
MMS | ◯ (@softbank.ne.jp の送受信に使用) | × (2012年3月までに対応予定) | × | × |
キャリアメール | ◯ (MMSとして送受信) | △ (IMAPで受信、プッシュ受信なし。2012年3月までにMMSもしくはプッシュ配信に対応予定との発表あり) | △ or × (iモード.netでのみ対応。iPhoneのみでの利用は困難) | × |
テザリング | × | × | ◯ |
2011年12月15日に公開された「絵文字・Eメール着信通知機能のiPhone 4Sへの対応予定のお知らせ」に記載のMMS、ビジュアルボイスメールなどの対応予定の発表にともない上記記載を修正しました(2011年12月16日 12:45追記・更新)
個人的にはドコモからiPhoneが出て、かつ、「dメニュー」みたいな「ガラスマ」的なものを諦め、きちんとiPhoneの価値を大事にしたサービスを展開してくれたら、迷わずドコモに戻るところなんですが、まぁ、それは期待できないだろうなぁとは思います。なんといっても、世界的に大きなシェアを持っていたノキアの端末もS60のアプリケーションをインストールできない形でリリースしたキャリアですから......。
山とかだと、意外とauも弱い
安定度でいえば、ソフトバンクよりauのほうがよさそうとはいうものの、これが山となると事情は異なってきます。
筆者は最近十ウン年ぶりに山に登るようになったのですが、高尾周辺の山ですら、ソフトバンクは見通しのきく頂上や尾根でも電波は届きませんし、登山口のバス停ですら圏外のところは多く、電波が入るところを探すのは一苦労です。で、auだとどうなんだろうというのが疑問ではあったのですが、先日、丹沢山系の大山(おおやま)周辺に行くことがあったので、2台とも持っていき、道々通信できるか様子を見ながら歩いてきました。
この時点では、SIMロックフリー版iPhone 4Sを入手していなかったので、au版iPhone 4Sとソフトバンク版iPhone 4を持って行ったのですが、大山山頂ではauもソフトバンクも場所によっては圏外となる状況でした。しかし、総じてソフトバンク版iPhone 4のほうが状況がよく、コース上もauは圏外であっても、ソフトバンクは通信できる場所が多数あるという、個人的な予想を大きく裏切る結果となりました。
今回は蓑毛バス停から、ヤビツ峠、大山山頂、阿夫利神社下社と歩きケーブルカーで下山しましたが、阿夫利神社下社までは大山ケーブルカーで登れるため、高尾ほどではないまでも気軽にくるハイカーも多く、auならそれなりに使えるだろうと予想していましたが、そうではありませんでした。
今回は、ドコモ回線での状況はチェックできなかったのですが、これから高尾周辺は紅葉本番という時期を迎えますし、今後3キャリアについて、チェックしてみたいと思います。以前ドコモを使っていたときの経験では、山では、やはりドコモが最善のような気がしますが、はたしてどうなるでしょうか?