3Dプリンタもええけど、なにげにカッティングマシンが熱い このエントリーを含むはてなブックマーク Clip to Evernote

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Maker's Baseに置かれているUniversal Laser Systemsのレーザーカッター。Maker's Baseは事前にワークショップを受講したうえで、自分でオペレーションするため、素材に合わせたレーザーの出力パラメータの調整もでき、焦げやすい紙や木材などの加工を自分で追い込んでいくにはいい

Makerムーブメントの盛り上がりのひとつとして、3Dプリンタを代表とする「デジタルファブリケーション」がバズワード的に注目を集めてはいますが、実際にモノを作ろうとしたときには、実はレーザーカッターなどのほうが、手軽で、かつ、実用性の高いものを作りやすいと個人的には感じています。

レーザーカッターは、東京であれば渋谷のFabCafeや、目黒にできたセルフタイプの工房Maker's Baseのほか、多くの場所で使えるようになりつつあります。カットデータはIllustratorで作ったデータが利用できるので、3Dプリンタと違って敷居が比較的低いのもありがたいところです。

今日は、そうしたレーザーカッターのほか、家庭でも気軽に導入できるカッティングマシンについて書いてみたいと思います。

非常に実用的なレーザーカッター

まずは、レーザーカッターの作例として、筆者が以前作った電動雲台用のリモコンのケースを挙げてみたいと思います。

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これは、シナ合板をレーザーカッターで切断し、穴を開けた部分に他の板が入るようなホゾのような構造で組み立てることができるようにしており、最後は、スペーサーとネジで固定しています(写真は仮組み状態なので、スペーサーとネジは取り付けていませんが、四隅に取り付けて固定します)。手作業でもできなくはありませんが、レーザーカッターだからこそ手軽にできる形状といえます。

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レーザーカッターなら、部品類を取り付けたりする穴あけや文字を入れることも一回の加工でできてしまうので非常に手軽です。また3Dプリンタとは違って、カットにも時間がかからないのと、素材をいろいろ選べる(木材はもちろんアクリルなど)のもうれしいところです。

その昔、頑張ってアクリルカッターでアクリル材を切って、ヤスリがけして、ハンドドリルで穴を開けて、アクリサンデーで接着して......などとやっていたころから考えると夢のようです。

家庭でも気軽に導入できるカッティングマシン

非常に使い勝手のいいレーザーカッターですが、まだまだ個人で買うにはお高いですし、集塵装置も必要でどうしても大掛かりになってしまいます。一方のカッティングマシンは、加工できる素材や精度は限定されますが、数万円で購入できる気軽さが魅力です。

もともとカッティングマシンは店舗などのサインに使うカッティングシートから、文字やロゴなどを切り出すためのものではあるのだけれど、最近の製品は専用台紙などを使って紙や布地などもカットできるようになっているので、紙を使ってモノを作りたい人にとってはかなり強力なツールになります。

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個人でも買いやすい製品としては、ローランド ディー.ジーの「STIKA」や「iDecora」のほか、グラフテックの「Silhouette CAMEO(シルエットカメオ)」があります。このなかで、カッティングシート以外の素材に対応しているのは、iDecoraとSilhouette CAMEOのふたつです。

ローランド ディー.ジーは昔からこの手の製品を出していて、個人的にもスキャナ一体型の小型のSTIKAを持っていたこともあり思い入れはあるのですが、現時点で個人で導入したいというのであれば、なんといってもMac OS X、Windowsともに対応し、12インチ(304.8mm)幅のカットが可能で、専用のカッティング台紙を使ってカッティングシート以外の紙のカットにも対応したSilhouette CAMEOがおすすめです。

カッティングマシンで切れるのはカッティングシートだけじゃない

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筆者がデザインしSilhouette CAMEOでカッティングしたポチ袋。デザインフェスタ vol.37で販売

カッティングシートは、裏面に糊が付いた塩化ビニルなどのシールが剥離用の台紙に貼られた構造になっています。カッティングシートを切る場合には、台紙を残して上のシートのみを切ることになります。ですが、普通の紙を切りたい場合、用紙を動かしながらカットするカッティングマシンでは、そのままではカットできず、用紙を固定するためのカッティング用台紙が必要になります。

Silhouette CAMEOのカッティング用台紙は、透明な樹脂シートの上に再剥離可能な糊が塗布されていて、そこにカットしたい用紙を貼り付けて機械にセットするようになっています。カットされるのは、上の用紙だけなので、カッティング用台紙は糊の付き具合が悪くなるまでは何回か使うことができます。実際に使ってみるとわかるのですが、カッティング用台紙から用紙を剥がす作業が結構面倒で、このあたりは高価な業務用のカッティングプロッタやレーザーカッターには劣るところです。

また、紙質にもよりますが、0.5mm厚までの用紙のカットも可能ですし、機械ですから、同じ形状のカットも簡単です。これらを貼り合わせることで、厚手のものを作ったり、レーザーカッターで作る前の試作などに使うこともできそうです。

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ちなみに、グラフテックの米国法人のSilhouette America, Inc.が出しているSilhouette CAMEOは、布のカットにも対応していると明記されており、布用のブレードも用意されています。本体はおそらく国内版も同じものだと考えられますので、布用のブレードを輸入すれば国内版でも布をカットすることもできそうで、夢がひろがります。

さらに、同じく国内では扱いはないものとして、12インチ×24インチのカッティング用台紙(通常のものは12インチ×12インチです)や、繊細な用紙のカットに使えるような糊の弱いカッティング用台紙もあったりと、明らかに米国のほうが消耗品のバリエーションも多いのが現状で、国内でもちゃんと取り揃えてほしいものです(切に望みます!)。

Adobe Illustratorで作ったデータをカットしたい

Silhouette CAMEOでカットするデータを作るには、付属の「Silhouette Studio」というソフトウェアを使うのですが、本格的な制作に使うには、やはりIllustratorなどでカットデータを作りたいものです。しかし、残念ながら付属のSilhouette Studioは、Illustratorのデータの読み込みには対応していません。そこで、Silhouette Americaのサイトから、 「Silhouette Studio Designer Edition」のライセンスを購入すれば(49.99USドル)、SVG形式のデータの読み込みも可能なるので、IllustratorのデータをSVG形式で書き出すことで読み込みが可能になります。

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印刷した内容に合わせて正確にカットしたい

Silhouette CAMEOでは、印刷データとカット位置を合わせをするために、印刷時に専用のマーカーを印刷し、それを光学センサーで検出してカット位置を正確に合わせるための機能がついています。これを利用するには、印刷データそのものをSilhouette Studioに読み込み、印刷とカットを行なうことになります。

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Illustratorなどでデータを作る場合は、カット用のパスと印刷データを1つのファイルとして用意しておいて、SVG形式経由でSilhouette Studio Designer Editionに読み込み、カット用のパスに対してカットの指定をします。あとは、Silhouette Studioからプリンタで印刷を行ない、続いてSilhouette CAMEOでカットをします。印刷時に位置合わせ用のマーカーが印刷され(そのため、利用できるエリアは限定されます)、カットに先立って、位置合わせが行われるので、用紙を置く位置は適当でもかなり正確なカットが可能になります。

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この機能は強力で、矩形ではないステッカーや、紙を使ったパッケージの制作や試作などをすることができます。写真は、ペーパーアートの作家の田向あい子さんのブランド「moclen.」のために、筆者がデザインしたパッケージの例です。このパッケージは市販の透明なケースと、Silhouette CAMEOでカットした紙製の箱を組み合わせたものです。この例では少量生産ですから最終製品まで作ってしますが、大量につくる場合の試作などにももってこいです。

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この週末は銀座で開催中の「紙のしわざ展」へぜひ!

ちなみに、筆者が背中を押してしまった結果、もともと手でのカットで作品を作られていた田向さんも、Silhouette CAMEOを導入されて作品づくりに活用されておられます。現在、田向さんのブランド「moclen.」は、銀座の奥野ビルにあるギャラリー「銀座モダンアート」にて開催中の「紙のしわざ展」に参加されておられます。会期は2014年2月25日(火)までで、最終日は17:00までとなっており、写真で拝見した限りでは、他の出展者の作品も非常に魅力的なものがそろっています。また、奥野ビルは1932〜34年竣工の非常に魅力的な建物ですので、ぜひとも、古い建築探訪もかねて訪ねてみてください。


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