いまさらだけど、Web標準の日々について このエントリーを含むはてなブックマーク Clip to Evernote

いまさらな話題な感は否めないけど、日本のWeb業界の中で、Web標準とかアクセシビリティに関することが、きちんと認知されていくためにも、このイベントの行く末はとても大事だと思うので敢えて書いてみる。

個人的な事情で参加はしなかったのだけど、先日開催された「Web標準の日々」について、主に「高いんじゃないの」という意見に対して、過剰とも思える「収支概算を公表します:[Web標準の日々]」という反応が主催者側からなされたというのが、事のあらまし。

Web標準に関するイベントそのものは必要とされている

個人的には、イベントのために尽力している知人、友人もいるし、彼らから聞こえて来る主催者側の熱意や情熱というのにも確かに共感できるところもある。

Webの世界で仕事をしていても、いまだに「Web標準」や「アクセシビリティ」に対する認識は、作り手もお客さんも低いのが現状で、その認知を高め、作り手側の意識もスキルも高めていく必要がある、ということは痛切に感じている。曜日の関係やらで、これまた一回も出ていない「CSS Nite」もそういう狙いがあるんだろうなというのはわかる。

きっかけとなったエントリは、

の2つだと思うが、これに対して“中の人”は相当憤っておられたようだけれど、まぁ、実際の運営の苦労を考えれば、わからなくもない。が、それなりの規模のイベントを、それも「Web標準」というパブリックな看板を背負ってやっている以上、この程度の批判に冷静に対応できないのは問題だと思う。

個人的にも「高いなぁ」と思ったのは事実だけれど、一連の問題を、単に値段の問題と考えるとその本質を見誤ることになる。というのが、僕の主張だ。

あと、主催者の方や準備、講演に関わっている方々のご苦労というのは、小規模ながらもイベントの開催側だったり講演をしたことも少なからずあるのでよくわかっているつもりだ。実際、行った人達の話を見る限り、有益なセッションもたくさんあったようで、イベントの価値そのものは、それなりにあったはずだという点は、まず押えておきたい。

イベントの価値が問題なのではなくて、運営の問題

アルファサードの野田純生さんという方のBlogのエントリ「お金を稼ぐことは悪いことではないし生活出来なきゃ何もできないけど色んな見方があるということを知っておくことは大切なことではないかな。」に、僕がCSS NiteからWeb標準の日、Web標準の日々に対して感じていた『微妙な感情』が、うまく書かれていたので紹介したい。

ただ、Web標準とかウェブアクセシビリティとか、テーマがそれであることで誤解を受けることはあると思う。それだけは意識しておくべきだと思うな。

もし、これの主催者がNPO法人もしくは任意団体で、収益が上がったとしても、Web標準の普及のために使いますというのが明確であれば問題なかろう。しかも、NPOであれば、その“社員(正会員)”については、法律で誰もがなれること求められていて、こうしたイベントを主催する主体としては申し分ないだろうと思う。

仮にこれがIDGジャパンとかCMPテクノロジージャパンみたいなところが主催する商業的なイベントだったら、「おまえら、商売でWeb標準を看板に掲げて」みたいなことは言われても、高いとかは言われなかっただろうと思う。

それに対して、実際の「Web標準の日々」は、題材そのものが公共性の高いものなうえに、ボランティアベースなんだか、商業ベースなんだか、よくわからないという立ち位置が、こうした批判を生んでいるんだろうと思うし、僕自身の気持ち悪さにも通じていると思う。

まぁ、立ち上げのころは、NPOだ任意団体がどうのなんてのは面倒で、まずは無料で、それぞれが持ち出しではじめるっていうのは、まぁ普通だろう。そんなイベントはたくさんあるし、実際、そういうところで話をさせてもらう機会もあって、それはまた愉しい。

しかし、「Web標準の日々」は、そういう段階ではない。実際、多くのスポンサーから700万円近い協賛金を集め、800万円を越える入場料収入があるイベントだ。もちろん、それだけに会場費だなんだと、出て行くほうも大きいのも当然で、講師にもギャラを払っているわけで、実際足りないかも、という気もしなくない。

しかし、これだけお金を集めながら、「収支概算を公表します:[Web標準の日々]」に書かれている但し書きは、商売なんだかボランティアなんだか、ほんとどっちなのよということが書かれている。言いたいことは判るけど、それいっちゃおしまいでしょうと思う。結局、関わっている個人ではリスクは負えないから、会社で赤字は負うし、人件費はかかっているけど計上しないよ。とか、商売にしたいけど、ボランティアでやってます。ふうに読めてしまう。でも、結果としてはわずかながら利益が出るっぽいけど、それがどうなるかはまったく言及されてない。

もうNPOとか作っちゃいなよ

解決するには、ボランティアなんだか商売なんだか、どっちかはっきりするしかないと思う。

僕個人としては、内容からいってボランティアに近い側でやっていってほしいと思う。単純にボランティア個人の集まりではできる規模ではなくなっているので、イベントも含めた受け皿として、NPO法人を設立して(けっこう大変だけれどね)、そこできちんと協賛金なりを集め、それをベースに会を回して、イベントを開催していくというほうがいいんじゃないのかと思う。

会としてある程度の予算があれば、単体で赤字になったらとかいう心配のない範囲でもそれなりの規模でイベントも開催できるし、お金を扱うために会社とかを絡ませなくても、NPO法人自体が契約の主体になるので、いまの主催側の悩みも低減できるし、そのほうが、Webの未来のためには絶対にいいと思うのだけれど。

講師にギャラを払うかどうかは、まぁ意見が分かれるところだろうけど、主催者が商売じゃなくて、本当に業界のために動いているのであれば、無償で喋る人はいるだろうと思う。スタッフだって同様。

その辺も含めて、みんなで考えたほうがいいと思うのだよ。

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://blog.project92.com/mt4/mt-tb.cgi/24

この一覧は、次のエントリーを参照しています: いまさらだけど、Web標準の日々について:

» お金を稼ぐことは悪いことではないし生活出来なきゃ何もできないけど色んな見方があるということを知っておくことは大切なことではないかな。 from Junnama Online (Mirror)
大分前のことだけど、ウェブアクセシビリティに関わる仕事をしていて障碍者の人にもヒ... [詳しくはこちら]

コメント

おっしゃること、よくわかります。「高い・安い」は価値観の問題で、それは個人の感覚であるとともに、対象が何であるかにもよります。さらに言えば、そのイベントの主旨にもよると思います。
業界発展のため云々を言うなら、誰でも参加できる価格設定にすべきだし、値下げのために講師は無償でもいいと思います。
実際ぼくも無償でしゃべる機会は何度かありましたけど、主旨に賛同すればぜんぜん問題ないし。

冷やかしや意識の低い参加者を排除するために有料にするのはいいと思いますが、いくらにするかは別問題だと思います。

河野さんコメントありがとうございます。確かに、参加のしやすさと、やる気のある参加者に集まってもらいたいという側面も、価格設定にとっては大事ですよね。

まぁ、CSS Niteから今回のイベントに至る趣旨は、僕の想像というところもあるので、実際に「業界発展のため」と標榜しているのかは確認したことはありませんが、そう信じたいところです。

しゃべる側としても、無償であろうと有償であろうと、準備にかかるコストって、過去の蓄積もあるし、一般的な講演料ではたぶんまかなえないくらいだったりするとは思うのですが、一方で、しゃべることでの自分自身のメリットっていうのも、単純に知識を整理できるとか、世の中でのプレゼンスを高められるとか、いろいろあるんですよね。どうせ回収できないうえに、会社の業務とかでいくと所属する会社にお金が入ったりすることもあるわけですから、だったらいっそ無償で、っていうのが個人的な思いです。まぁ、ギャラありのほうが、マジメに準備する人もいるでしょうから、一概には言えませんが。

今回の講演料がいくらかはわかりませんので、以下は妄想ですが、「人件費(撮影費、モデレータ、講師料)」の6,277,175円のうち、仮に撮影費が100万円だとして、各トラックにモデレータが1日あたり1人として頭割りすると、1セッション5万円くらい。ベンダとかは自社製品の宣伝になるネタもあるわけで、はっきりいって、ここは削ってもいいんじゃないかとは思います。仮に5万円だったのを気持ち程度の1万円にすると、チケット代は半分以下に抑えられるんですよね(チケットの販売手数料も下がりますし)。そうすると、スポンサーからの協賛金だけで、会場費と印刷代はまかなえてしまうので、赤字になるリスクが低減できるので、おそらくバッファーとして取っていた分を参加者に還元したノベリティとかも不要になっちゃうんですよね。そうなれば、スタッフにも弁当代くらい払ってあげなよ。とかいうのもあってもいいわけだし。

まぁ、これは主催者の考え次第ではありますけど。河野さんが「お金のにおいが強すぎる」とかかれていたことに関して、僕はこんなふうに考えてました。

まぁ、あれだ。ムシどもを追い払おうと思って収支概算公表という殺虫剤を散布したはいいが、その際にマスクするの忘れてたって奴だな。

> 一方で、しゃべることでの自分自身のメリット

あります。めちゃくちゃあります。
まあこれを持ち出すと議論が拡散しまくるので置いときますが、本人のメリットはとても大きいです。

それはさておき。

今回の値付けは「誰のために」とかそういうことがどれほど考えられたのかが、外から見てると疑問です。きっといっぱい考えての結論だと思うのですが。

特定サイトへの(ネガティブなコンテキストでの)リンクを張ったりはずしたり、どうもその辺を見ていると、自分たちのリスクを回避するのに一生懸命な感じがしました。

儲かるイベントとしてやるならそれでいいんだけど、建前的にはそんな感じじゃなかったし。
ぼくの気持ち悪さは、そのあたりの言動のズレにあると思っています。

コメントを投稿

(いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。)

Profile